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COLUMN|とよたと演劇
石黒秀和(とよた演劇協会会長)

2003年と2006年に全市規模で行った「とよた市民野外劇」以降、豊田の演劇事情はそれなりに活況ではないかと思っている。
しかしなにをもって活況というかは、人それぞれだし、なによりもともと小さな世界の話。
客観的な判断はなかなか難しい。
 
それでも、2008年に始まった「とよた演劇アカデミー」とそれに続く「とよた演劇ファクトリー」、また2011年に始まった「とよたこども創造劇場」の一連の人材育成事業により、多くの演劇人材が輩出されたのは確かであり、その中から劇団カレイドスコープをはじめ多くの劇団が誕生し、有志による自主企画としての「短編演劇フェスティバルT1」や「とよた演劇祭」が生まれ、2017年には「とよた演劇協会」が設立された。
 
市内で演劇に関する公演を観られる機会は10年前の倍近くになったのではないか。
毎日市内のどこかで演劇の稽古が行われている。
とよた演劇ファクトリーやとよたこども創造劇場の指導者でもある鹿目由紀氏の存在も大きい。
いい指導者のもとではいい選手が育つ。スポーツに限ったことではない。
鹿目氏は、昨年から役者だけではなく演出家の育成にも乗り出し、また、子どもを対象にした戯曲講座も開催してくれている。
 
もちろん、豊田の演劇事情はそれに限ったものではない。
山間部を中心に地歌舞伎なども盛んなため、あえてここは現代演劇に絞って話をするが豊田市は中学校区に一つ交流館がありそこでは子育てや高齢者の生きがいづくり、あるいは防犯などをテーマにした自主サークル的な劇団が活動している。
 
また、おやこ劇場や文化振興財団主催の興行的な公演も年間を通して上演されているし、近年は名古屋の人気劇団「ハラプロジェクト」の公演もホールだけではなく農村舞台などでも行われている。
あいちトリエンナーレ2019の公式プログラムとして、豊田市民文化会館大ホールの舞台上舞台で上演される「幸福はだれにくる」は、現代演劇の魅力をさらに多くの人に届けてくれるだろう。
 
さて、ここまで書くとなんとも豊田の演劇事情は未来に向け明るいことばかりのようだが、もちろんそんなわけはなく、見方考え方で一変する。
例えばこの10年で市内に劇団は確かにたくさん生まれたが、では定期公演を行っている劇団は幾つあるかと問われれば、約20年前、「豊田市民創作劇場」から生まれた「劇団ドラマスタジオ」ただ一つである。
 
そもそも豊田の演劇は、このドラマスタジオの主宰でもある岡田隆弘氏がこの50年以上をたった一人で背負ってきたと言っても過言ではない。
 
演劇とは、かくも続けるのが難しいものなのである。
 
また演劇の質もよく問われる。外からわざわざ観に来たくなるような作品や劇団が豊田にはないとは昔も今も言われることだが、それは集客の問題にもつながっている。
 
いまだ集客のほとんどは劇団員の手売りによる。
それでは劇団員の負担も増すし、なにより観客、創り手双方の向上につながらない。
 
観客の批評眼が創り手や作品を育て、それがまた観客を育てる。
それが今はほとんどない。
そして、劇場の問題である。
この街には、小劇場がない。
今更ハードかと言われそうだが、演劇(あるいは舞台芸術)の振興のためには小劇場の存在は不可欠だと思っている。
立派なものは必要ない。
小さな空き倉庫をブラックボックスとして改装するだけでいいのだが…。
 
最後に、私事だが、今年、演劇部をつくった。
まったく私的な、大人の部活動である。
とりあえず40歳以上の、おっさんばかり7名ほどが月1回程度平日夜に活動している。
楽しみながら、いかに社会人として持続可能な演劇を続けるか、それも高い質を目指して。
 
そんな新たな挑戦の場だとも思っている。
 
 
※タブロイド版「TAP MAGAZINE 9月号」から転載

石黒秀和(とよた演劇協会会長)

脚本家・演出家。豊田市出身。
高校卒業後、富良野塾にて倉本聰氏に師事。
豊田に帰郷後、豊田市民創作劇場、豊田市民野外劇等の作・演出、とよた演劇アカデミー、野外群読劇他、多数の事業・演劇作演出を手掛ける。
豊田市文化芸術振興委員、とよた演劇協会会長、とよた市民アートプロジェクト推進協議会会長。

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