REPORT/COLUMN
REPORT | 豊田市美術館で開催された「出張手芸部」のワークショップに参加してきました!
機能と装飾のポリフォニー展関連ワークショップ 宮田明日鹿「出張手芸部」

9月4日(日)この日は豊田市美術館で開催されている「機能と装飾のポリフォニー展」の最終日。
来館者で賑わう中、今回は関連ワークショップとして豊田市美術館で開催された「出張手芸部」に行ってきました。
 
出張手芸部を企画したニットテキスタイルアーティストの宮田明日鹿さんは、2017 年から名古屋市港区の港まちづくり協議会(※1)とMinatomachi Art Table,Nagoya[MAT,Nagoya](※2)があるポットラックビルで提案公募型事業に採択され「港まち手芸部」というプロジェクトを展開しています。
「港まち手芸部」は、その地域に住まう方を中心に、手芸をいとぐちに緩やかに集い、学びあう場として手を動かしながらいろんな会話が飛び交う場所です。
「家の中のことを外に出してみる」行為という側面も持っています。それが「港まち手芸部」であり、宮田さんが運営する手芸部の活動です。
また、宮田さんは今年度開催された国際愛知芸術祭「あいち 2022」の参加作家であり、有松会場で有松手芸部を開催するとともに、今までの活動のアーカイブとして年表、資料、参加する方の作品、活動中やインタビューの音声、新たに制作した手芸部に参加する方々の作品集を展示していました。
 
今回は私も手芸部に仮入部しつつ、取材を行っていきました。
さっそく手芸部の方のサポートをいただきながら編み物を進めていきます。

こちらは港まち手芸部の活動で集まった寄付の糸や道具で、色々な素材があります。

 
「ここの段では1つの穴に3回針を通して、次の段に行ったら4つ通して…」 言われた通りに進めるのがとても難しい…

 
周りの皆様は色々な手法を使って思い思いの作品を制作されています。
刺繍をやっていらっしゃる方、棒針での編み物をする方、お母さんと一緒に参加したお子さんは手編みで帽子をつくられていたり。
中には自宅でとれた綿花を持参して、綿取りをするところから制作をされている方もいました。周りの方も巻き込んでの綿取り作業では和やかな雰囲気が流れていました。
 
やっとの思いでぐい呑みが乗せられる位のコースターが出来ました…!アクセサリーにしても良さそうとアドバイスをいただきました。

続きは宿題の楽しみとして、宮田さんにインタビューをさせていただくことに。
 
-今回の出張手芸部開催のきっかけはどのような経緯だったのでしょうか?
今回は豊田市美術館学芸員の千葉さんにお声掛けをいただいたことがきっかけです。
「機能と装飾のポリフォニー展」の開催期間中に、関連企画でいかがでしょうとの事でした。美術館で出張手芸部というかたちでのワークショップは初めてで、どうなるかな?と思いましたが、はじまりだけ決めて、参加する方には自由に出入りしてもらえるような仕組みにできたり、開いた場所でのワークショップにしたかったので、ロビーで開催することに相談して決めていきました。
 
-実際開催されてみていかがですか?
開いた場所でみなさん最初はそわそわされていましたが、手芸部がはじまり、作ったものを見せ合ったり、少しずつ場が和んでいく風景が嬉しかったです。
初対面の方同士だと緊張するのは当たり前ですが、手芸をきっかけに会話が広がったり、一緒に手を動かしていくことでリラックスしているのかな?と感じ取ることができました。
前にスウェーデンの美術館でニットカフェに参加したことがあって、それがロビーで行われていてその風景を日本でもいつか!と思っていたので今回実現できた~と感激しています。
 

 
ここで、豊田市美術館学芸員の千葉さんにもお話をお伺いしました。
 
-宮田さんにお声掛けしたのはどの様な理由だったのでしょう?
今回の展示「機能と装飾のポリフォニー展」では20世紀前半に、女性作家たちを中心に、さまざまに試作、制作されたテキスタイルデザインを紹介しています。
宮田さんのワークショップでは量産を目指した当時のデザインとは異なるものの、同じように女性を中心に試みられた手芸を改めて体験していただけたらと思いました。
 

(左:TAPライター 中央:宮田さん 右:千葉さん)

 
-最後に宮田さんにこれからの展望についてうかがいました。
手芸部についての展望はと言われると難しいですが、現代美術のある現場での展開してきたプロジェクトであることが私の中では重要になっています。
そして調査と記録すること、と今は定義しています。
活動自体は「家の中のことを外に出してみる」作業であり、現在3カ所で展開してきましたが、2カ所は自主運営という形で引き継ぐことができました。
私は立上げとして、呼ばれればお仕事としてどの地域にも行きたいなというスタンスです。
そして手芸ってなんだろう、ということを活動をしながら見つめていきたいです。
 

 

※1 港まちづくり協議会
地域内外に誇れる「なごやのみ(ん)なとまち」を目指し、2006年より名古屋の港まちエリアで、住民と行政の協働によるまちづくり活動を行っている団体。「暮らす、集う、創る」をテーマに防災、子育て、ガーデンプロジェクトなどの各種のコミュニティ活動、魅力・にぎわいづくり、アートプログラムなど、さまざまな事業を展開している。

※2 Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]
上記の「港まちづくり協議会」が母体となり『Minatomachi POTLUCK BUILDING』を拠点に、現代美術の展示やスクールプログラム、空き家を資源として活用する「WAKE UP ! PROJECT」など様々なプロジェクトを展開している。

機能と装飾のポリフォニー展関連ワークショップ 宮田明日鹿「出張手芸部」

宮田 明日鹿(みやた あすか) https://asukamiyata.com
ニット、テキスタイル、手芸などで作品を制作。その一方で、2017年より「手芸部」のプロジェクトを展開。主な展示・活動に「名古屋×ペナン同時開催展:名古屋文化発信局」Minatomachi POTLUCK BUILDING(2021年、愛知)、「金石手芸部」金沢21世紀美術館主催「自治区 金石大野アートプロジェクト『かないわ楽座』」金石地区(2021年、石川)、「港まち手芸部」(2017年-進行中、愛知)。今夏開催の「国際芸術祭あいち2022」出品作家として、有松地区で手芸部を開催・作品展示を行う。

 
日時:2022年9月4日(日)午後1時30分~5時
場所:豊田市美術館1階ミュージアムショップ横+ライブラリー

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