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COLUMN | 「私のアートの見方」 第2回・アートを見る時は野生に帰る
森かん奈(TAP magazine 編集部)

「アートの見方は人それぞれ」、と言ってしまったらそれまでなのですが、やはりその答えが一番しっくりくると思ってしまいます。
ただ、「こんな面白いことがあったんだ!」という「気づき」を見逃してしまうのはもったいない。
それが唯一アートを見るときに意識していることかもしれません。
 
「気づき」をたくさん見つけること、それは自分の頭の中の間口を広く持っておくことだと思います。
アートを見る時、私の頭のなかは基本的に空腹の動物の様な状態です。
例えば自分が飢え死にしそうなライオンだったとします。
目の前に美味しそうなシマウマがやってきました。
「あの部分からは狙えないか」
「もう少し遠くから攻めてみよう」
など、狩りをしている時は獲物についてアンテナを張っていますよね。
 
アートを見るときも同じ様に、とにかく作品を美味しく食べたい、そんな気持ちで見ています。
どうやったら狩が成功するか、どう見たら自分に「気づき」が生まれるか、作品のいろいろな要素に関心を寄せておきます。
そのために視覚情報だけでなく、光、音、温度など自分周りの情報がいつ入ってきても良い様にしています。
アート鑑賞で言えば、いろんな要素が複合されて、初めてその作品の魅力が伝わる場合もありますし、時間帯や、天気によって作品の見え方が変わる場合もありますよね。
試行錯誤をしながらどんどん獲物に近づいていくので、獲物の心臓=作者の意図という見方もありかなと思います。
 
さあ、獲物を仕留めました。
獲物の全部を捕らえられなくても、足とか腕とか一部を持って帰れたとします。
この時に自分の中の「気づき」ストックが動き出します。
これは自分の中の味覚です。
人それぞれ好きな食べ物がある様に、「気づき」ストックの形は人それぞれです。
それは人生経験によって人それぞれ全く感性が違うから。
でもその違う「気づき」ストックを通った時、新しい見方が生まれます。
「意外と美味しかった」
「もしかして、あの部分も食べれたのか」
「もっと食べたい」
そんな気持ちになってまたアートの狩りに行くのです。
 
アートを見るということはおいしい食事を楽しむということに似ていると同時に、自分の頭を柔らかくする練習になると思います。
そして、おいしい食事をを他人と共有することはとても楽しいと思います。
味覚の違う人と食事に行くとおいしい食べ合わせを教えてもられるかもしれません。
皆さん、美味しいアートを愉しむため自分の頭中の間口を広くし、ストックをたくさん持つのはいかがでしょうか。

森かん奈(TAP magazine 編集部)

もり かんな
豊田市出身。
博物館や古美術商など様々な視点からアートを見てきました。博物館とおでんは似ているような気がします。いろんな人やモノが一緒に存在している空間って面白い、その面白さを伝えるにはどうしたら良いか。日々ゆるゆると考えています。おでんの出汁の様な存在になりたいです。

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