豊田市駅から矢作川を挟んだ東に位置する高橋地区。この辺りは豊田スタジアムというシンボルを持ちながら、駅周辺の賑やかな雰囲気とは変わって、のどかで落ち着いた雰囲気があります。今回は閑静な住宅街の中に佇むギャラリースペース「座辺身辺」に行ってきました。
オーナーである片瀬和宏さんは陶芸家です。2015年から豊田市の高橋地区に座辺身辺を設け、コンセプトを重視した企画展を開催
しつつ、ご自身の活動も全国的に行われています。今回取材した「コンテナコンテナ展」は座辺身辺として約2年ぶりの待望の企画展となりました。
会場は片瀬さんのご自宅兼ギャラリースペースの一角です。ギャラリースペースは入り口側の壁面がガラス張りで、自然の光が空間に雰囲気をつくり出していました。
今回の展覧会では金属、陶磁、古材を素材として扱う5名の作家の個性あふれる作品が並んでいました。小西光裕さんの「手付きコンテナ」はKiTARA(豊田市駅前のシネコン)の交差点をイメージして制作されています。
この作品は胴径85mmの容器が8個収納できる仕様で制作されており、また各作家が異なる素材で制作した同サイズの容器が並べられています。自然物特有の質感が映える器は思わず手に取ってみたくなり、また並べたくなる魅力がありました。
ギャラリーの名前になっている座辺身辺とは「自分の身の回りにあるもの」という意味であり、片瀬さんによる造語です。今回の展覧会のコンセプトについて、「家で過ごしていて、調味料などを入れるガラスケースの収納ができたらいいなと考えていました。コンテナのように容器を収納できるアイテムを作ろうと思ったことがコンセプトのきっかけとなっています」と話してくださいました。コンテナコンテナ展は情勢的に家で過ごす時間が長くなる今、まさに身の回りを見つめてできたコンセプトなのです。
豊田市のイメージについて、最近になりアートスポットの誕生を実感しているとお話しされていた片瀬さん。豊田市は着々とアーティストが活動しやすい場所になりつつあるのかもしれません。TAPの活動が未来の新たなアートスポット発掘につながることを願っています。
日時:2021年4月3日(土)-12日(月)11:00-18:00
場所:座辺身辺(豊田市高橋町2-16-4)
参加作家:小西光裕(金属)、日置哲也(陶磁)、宮崎栄一(金属)、渡邉論之(古材)、片瀬和宏(陶磁)
取材:森かん奈(もりかんな)
TAP magazine編集部。博物館や古美術商など様々な視点からアートを見てきました。博物館とおでんは似ているような気がします。いろんな人やモノが一緒に存在している空間って面白い、その面白さを伝えるにはどうしたら良いか。日々ゆるゆると考えています。おでんの出汁の様な存在になりたいです。
写真:oyasuiotomo