REPORT/COLUMN
INTERVIEW | アートで蘇えるとよたの農村舞台群 10周年記念農村舞台アートプロジェクト2019
かとうさとる(農村舞台アートプロジェクト2019総合ディレクター)

「映像から見た豊田の定点観測30年」に招かれた映画監督の大林宜彦は、「私は平成の大合併は失敗だったと批判してきたが、豊田市に来てその考えが変った。
確かに旧町村はトヨタという経済的に豊かな文明社会に編入されたが、旧市民は豊かな自然と文化に編入された幸せな合併だった」と語った。
こうした農山村の豊かな文化・習俗を象徴するのが、豊田市北部から東部の中山間地一帯に展開する国内有数の農村舞台群です。
ちなみに農村舞台というのは、江戸時代後期から昭和20年代前半にかけて、農山村の娯楽の殿堂として神社の境内などに建てられた芸能舞台の総称で、北は秋田から南は鹿児島まで日本各地に分布。
中でも豊田市東北部から奥三河、岐阜県の飛騨・東濃地域、長野県の南信地域にかけて約3分の1の舞台が集中し、神社拝殿型という農村舞台文化圏を形成していることが判明しています。
現時点では目視調査のレベルですが、中馬街道や秋葉街道、岩村道など、三河と伊那谷や飛騨・東濃地域を結ぶ物流の道が文化を運んだ証で、宿駅として栄えた三州足助の町並みに往時の賑いを偲ぶことができます。
 
農村舞台アートプロジェクトは、こうした農村舞台群を地域の文化資源として活用。
アートで地域の絆を繋ぐとともに、新たな市民文化を発信するアートイベントとして2010年にスタート。
農村舞台の空間に清新なアーティストが個展形式で挑む『アート』。
人形浄瑠璃からバレエ、オペラや舞踏など多様な舞台芸術で挑む『ライブ』の両輪で構成するプロジェクトは、文化庁も下見に来豊するなど地域に根差したアートイベントのロールモデルとして注目を集め、現在に至っています。
 
10周年という記念の節目を迎える本年度は、『アート』と『ライブ』の両輪で構成する基本方針は変わらないが、名古屋市と豊田市の2都市で開催される国内最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に連携企画事業として参画するため、例年の秋開催から夏開催に変更。
会場もトリエンナーレで来豊する鑑賞者の立場に立って、「分かりやすいルート」「中心市街地から往復3時間程度の距離」を条件に、和紙の里小原地区に通じる国道419号線に沿って点在する7カ所の農村舞台を選定。
豊田市の豊かな自然と文化習俗が息づく中山間地に誘うと同時に、アートで蘇えるとよたの農村舞台群を全国に発信します。
 
 
-農村舞台アートプロジェクトをはじめたキッカケについて教えてください。
農村舞台アートプロジェクトは、市内の中山間地一帯に現存する国内有数の農村舞台群を地域の文化資源として活用。アートで地域の絆を繋ぐとともに、新たな市民文化を発信するアートイベントとして2010年にスタート。農村舞台の空間に清新なアーティストが個展形式で挑む『アート』、人形浄瑠璃からバレエ、オペラや舞踏など多様な舞台芸術で挑む『ライブ』の両輪で構成するプロジェクトは、文化庁も下見に来豊するなど地域に根差したアートイベントのロールモデルとして注目を集め、現在に至っています。
 
-10周年記念農村舞台アートプロジェクトの特徴はどのようなものですか?
10周年という記念の節目を迎える本年度は、『アート』と『ライブ』の両輪で構成する基本方針は変わらないが、名古屋市と豊田市の2都市で開催される国内最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に連携企画事業として参画するため、例年の秋開催から夏開催に変更しました。
 
-農村舞台アートプロジェクトの『アート』と『ライブ』の選考はどのようにして行われていますか?
『アート』は、今に生きる農村舞台の可能性を引き出すため、農村舞台の空間に多様なジャンルのアーティストが個展形式で挑むもので、挑戦したアーティストは延べ55組を数え現在に至っています。
選考方法は清新なアーティストの登竜門とするため全国公募による選考方式を3年前から採用。
10周年という記念の節目を迎える本年度は、あいちトリエンナーレ2019連携事業に相応しい刺激的な内容とするため、従来の3組の公募に加えて、著名なアーティスト2組をゲストとして招聘。計5組のアーティストを予定しています。
『ライブ』は、農山村の娯楽の殿堂として親しまれてきた芸能する喜びを、伝統芸能から同時代性の身体表現まで多様な舞台芸術で表現するもので、本年度は「和洋音楽のガラコンサート」と「農村歌舞伎と和太鼓集団の共演」の2公演を予定しています。
 
-農村舞台アートプロジェクトを継続していくために大切にしていることはなんですか?
大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクターで、地域と協働する新たなアートの世界を開いた北川フラム氏が「農村舞台に特化したアートイベントは豊田市だけ」と注目するように、農村舞台の最大の魅力は現代美術や舞踏など異質なジャンルと遭遇するとき、今まで見えなかった構造の仕組みが見えてきます。
私たちはこれを農村舞台の化学反応と呼んでいますが、伝統のもつ確かな存在感にただ驚くばかりです。
都市の文化と農山村の文化の衝突から何が生まれるのか、農村舞台アートプロジェクトは永遠のチャレンジャーであり続けたいと願っています。
 
 
※タブロイド版「TAP MAGAZINE 8月号」から転載

かとうさとる(農村舞台アートプロジェクト2019総合ディレクター)

豊田市生まれ。
1970年代後半から全国に広まった現代いけばな運動の担い手。

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