REPORT/COLUMN
INTERVIEW | 下山の歴史をイラストで伝える イラストレーター・なかむらひろこさん
なかむらひろこ(イラストレーター)

豊田市下山地区にある「香恋の館(かれんのやかた)」は、ポプリ作りの体験や、軽食・喫茶、ショッピングやギャラリー鑑賞を楽しむことができる施設です。
2 階には郷土資料展示コーナーがあり、下山の郷土史を学ぶことができるようになっています。
10月にリニューアルした展示コーナーは、下山地区で民話のイラストを手がけるイラストレーター・なかむらひろこさんのイラストとともに下山の郷土資料が展示されています。
 
今回は新しい展示コーナーのお披露目と、ギャラリーで同時開催の「なかむらひろこのカレンダー原画展」(10/14-25開催)を拝見するとともに、下山地区では誰もが知っているなかむらさんにインタビューを行いました。
 

 
-作品では下山の歴史についてかなり細かく取り上げられていますが、元々下山地区のご出身なのですか?
出身は岡崎市です。1997年3月に下山へ移住しました。
 
 
-下山の歴史に興味を持ったきっかけはなんですか?
移住した年の夏に「下山の自然と歴史を学ぶ」県民大学の講座が下山で開かれ、そこで資料室の監修をしていただいている宇野泰雄先生と出会いました。
宇野先生は地元下山を大変愛しておられ下山村を深く調査研究して下山村史を執筆中でした。
先生のお話は分かりやすく下山がとても身近に感じられこの地域をもっと知りたいと思いました。
その頃、中日新聞の「ふる里点描」という民話をテーマにしたコーナーに挿絵を描いていましたので、私が民話に関心があることを知って、「下山の伝説」や「石仏」の資料の冊子などくださり、「こうゆう物も描いてください」と言ってくださいました。
冊子は下山村史の伝説のページの抜粋で、136話の伝説が短い文章で書かれていました。
 

 
講座の後、下山村から村の観光絵地図を描いてほしいと依頼があり、役場へ行くたびに「昔話を村史に載せておくだけではもったいないから本にしてほしい」などと話していました。
移住から8年後の2005年4月に下山村は豊田市と合併することになり、前年の2004年1月から下山村発行の「広報しもやま」の裏表紙に「子どもたちに語り継ぎたい下山村の民話」として、下山の代表的な民話15話を調べて文章を書き挿絵をつける仕事をさせていただきました。
この時も宇野泰雄先生にご指導をいただき、毎回先生のひとことでお話の背景を書いて頂き一緒にお仕事をさせてもらいました。
 
2005年4月に豊田市になると民話のページは無くなりましたが、2010年4月に「子どもたちに語り継ぎたいしもやまの民話」として再開して今に至っています。
12月号で141話です。
昔話の仕事がしたかった私が、これほどお話が豊かな地域に来ることができ、沢山のお話に出会えたのは、本当に幸せなことと思います。
 

 
-下山にいらっしゃる前から絵のお仕事はされていたのですか?
高校生の頃に子どもにかかわる絵本の仕事、昔話の仕事がやりたいと思っていました。
仕事は人生勉強と思い色々紆余曲折ありましたが、25才の頃、デザイン事務所を止め、画材店でアルバイトをしながら東京や大阪の出版社に売り込みを始め、自費出版をしたころから少しずつ仕事をもらえるようになりました。
 


過去のカレンダー挿絵 1996(上1枚)、2001(下3枚) 提供:なかむらさん
 
-今回の原画展に出品している作品は、淡い色合いが多いような気がしますが、通常の作風と変えられているのでしょうか?
カレンダーの絵はぼーっとしたいときに見られる作品になるといいなと思って描きました。
実際にこの絵を見た中学生の子が「疲れたときに見るとほっとする」と言ってくれたそうで、私と一緒だな、と思いました。
キャラクターは濃い目に描いていますが、風景全体の色合いは淡くしています。
去年のカレンダーはもっと絵が小さかったので、もっと絵の色が強かったと思います。
今回の原画展で見ていただいている作品は本当に優しい色合いだと思います。
実際のカレンダーに印刷されてくる色とはまた違って、絵具の色は独特で立体感がでますよね。
 
移住してきた当時から、毎日決まった時間に決まった場所でおしゃべりをしているおばあちゃん3人組をよく見かけました。
同じ時間にご飯を食べて、腹ごなしに神社に来て、そのあと4ヵ所くらいの場所でお参りをされていました。
実は原画のモデルにもなっています。
今はもうなかなか見かけないですが、周りのお年寄りの方は皆さん本当にお元気だなと思います。
 


 
-作品について、また、なかむらさんご自身のことについてたくさんお話しいただきありがとうございます。これからのご自身の展望などありましたら教えていただきたいです。
子どもたち向けに民話の紙芝居を作ってみたいと思っています。
小学校に行って昔話をして、自分が住んでいる地域の民話を知って欲しいですね。
以前は、小学校に行って昔話の舞台になった場所をめぐるイベントをやっていたのですが、コロナ禍で2年くらい中止になってしまっています。
そうすると、その学年の子たちはお話に触れる機会がないですよね。
子どもたちが民話を知ると、日常的に「民話って面白いね!」「下山ってたくさんお話があって凄いところだね!」と嬉しそうに声をかけてくれることがあります。
言葉として発言してくれることは、ものすごく影響力のあることなんだと思いました。
そうやって、子どもたちの中に民話が息づいているんだと思う機会が何度もありました。
昔話をもっと知りたいと持っている子もいると思いますし、なるべくお話は人の声で聞かせてあげたいと思っています。
近々、ぜひ実現したいです。
 
 
-貴重なお話をありがとうございました。
 
 

 
TAP記事をご覧の皆様にだけちょっとだけ詳しくご紹介!
郷土資料展示コーナーの展示は、地元の歴史愛好家が集う「下山の郷土史を学ぶ会」の皆さんの意見も伺いながら作成されました。
当時の雰囲気まで伝わるように、解説文は下山弁が用いられていて、まるで地元の方々に昔話を聞いているかのような展示となっています。
新たに作成された歴史年表や下山の四季を紹介する展示は、イラストを豊富に使い、楽しくわかりやすく下山の郷土の暮らしが学べる内容となっています。
 

 
また、この地域では以前、埋蔵文化財の大規模な調査が行われました。
調査時に出土した縄文土器や中世の陶器など、今回初公開の資料も豊富に展示されています。
リニューアルは5年計画で、次年度以降も引き続き行われていきます。
 
これから紅葉もますます深まる季節。
歴史、グルメ、自然を堪能できる下山地区「香恋の館」に皆さま足を運んでみてはいかがでしょうか。

なかむらひろこ(イラストレーター)

豊田のお気に入りの場所
一番のお気に入りの場所は、自分のアトリエです。
でも、カレンダーの原画展にある風景のように、下山はどこを切り取っても絵になるような場所が多いです。我が家から見える素敵な風景たちがお気に入りです。
 
香恋の館
住所:〒444-3206愛知県豊田市羽布町鬼ノ平5番地
電話番号:0565-90-4120
営業時間:10:00-17:00※1~3月は10:00-16:00
休館日:火曜日祝日の場合は翌々日の木曜日)、年末年始
<香恋の館公式サイト> http://karennosato.com

 
取材:森かん奈(TAP magazine編集部)
博物館や古美術商など様々な視点からアートを見てきました。博物館とおでんは似ているような気がします。いろんな人やモノが一緒に存在している空間って面白い、その面白さを伝えるにはどうしたら良いか。日々ゆるゆると考えています。おでんの出汁の様な存在になりたいです。
写真:oyasuiotomo

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