REPORT/COLUMN
REPORT | 「豊田の歴史を調べて記して受け継いで 豊田市郷土資料館から(仮称)豊田市博物館へ」
豊田市郷土資料館

2022年9月30日、ひとつの施設が閉館しました。
「豊田市郷土資料館」。
その名のとおり、郷土の歴史を物語る資料を収蔵・展示していた施設です。
 
現在、(仮称)豊田市博物館が豊田市美術館のお隣に建設中。
完成後、郷土資料館の収蔵品は「豊田市近代の産業とくらし発見館」の収蔵品と共に博物館に展示されることになっています。
 
今回、「閉館」という節目に際し、これまでの郷土資料館での活動とこれから開く博物館について、豊田市文化財課博物館準備室の学芸員・名和奈美さんにお話をうかがいました。
 

-本日は閉館が差し迫るお忙しいところお時間いただきありがとうございます(※インタビュー日:9月22日)。さっそくですが、豊田市郷土資料館について教えてください。
豊田市郷土資料館は、豊田大塚古墳の発掘を契機として開館しました。
当時は一般的に、発掘されたものを管理・展示する施設が地方自治体にはあまりありませんでした。
そういった中で「地元のものは地元で守り伝える」という考えのもと、昭和47年に開館しました。
昭和50~60年代にほかの市町村でこのような展示施設の建設ラッシュがあり、豊田市のこの事例は全国でも先駆的でした。
 

名和奈美さん。大学で考古学を専攻していて、ゼミで小原・藤岡・足助の遺跡分布調査に参加していたとのこと。

 
-開館後の郷土資料館の活動はどのようなものでしたか?
市民の皆さんなどからご寄贈いただいた資料などについての調査・研究や、その成果として企画展・特別展を開催することが主な活動でした。また、子どもたちが鎧を着ることができるイベントなど、資料館や地域の歴史・文化に親しみを持ってもらうための催しも開催しました。
 

-活動の中で印象的なのは、こどもの日の前後に、子どもたちが戦国時代の鎧兜や姫の衣装を着る体験会をされていましたね。
とても人気のあるイベントでした。子どもたちに向けての活動は他にも、夏休みには「古代人体験をしよう!」という企画で、縄文や弥生の古代の衣服を着てみたり、古代食を食べてみたりする体験会をしたこともありました。また、「郷土学習スクールサポート」として、小中学校への出前授業や、資料館見学の受け入れにも力を入れてきました。
 
-そのほかに郷土資料館では「とよた歴史マイスター」を認定されていましたね。
とよた歴史マイスターは平成26年からはじまりました。現在70人の方が認定を受けています。
それぞれの興味があること(分野や時代)について、個々に研究など活動をしています。
 
-博物館にも継承されるんですか?
とよた歴史マイスターとして新たに認定することはなくなりますが、新たに市民の方々に博物館のパートナーとなってもらえるような制度をつくる予定です。
展示のインタープリター(ガイド)や、自然観察などの自然分野の活動も加わり、いくつかのプロジェクトから選択して活動していただけるように準備を進めています。
 

郷土資料館展示室

 
-(仮称)豊田市博物館の施設や活動などについて、現段階での予定を教えてください。豊田市博物館準備室
令和6(2024)年1月に常設展示部分が開館(プレオープン)し、同年10月に全面開館する予定です。
常設展示室では、豊田市の歴史・自然がわかる収蔵資料の展示を、企画展示室では全国を巡回している大規模展覧会も受け入れることが可能になる予定です。
体験室もあるので、自然分野の標本つくりや、食文化の体験などもできるようになると思います。
博物館のパートナーとなっていただく市民の皆さんには、パートナー制度のスタート当初は博物館からプロジェクトをご提案しますが、パートナーのみなさんと「こんなことをやりたい」「こういう活動も必要だよね」など、一緒に考えて創り上げていきたいと思っています。
 
-市民のみなさんがどんどん関わっていただけるといいですね。
博物館の中だけではなく、市内のいずれもが活動できるフィールドと思って関わっていただければ嬉しいです。
 
-郷土資料館とくらし発見館の機能が継承され、新しい博物館につながっていくことがわかり、開館がとても楽しみになりました。今日はありがとうございました。

豊田市郷土資料館

〇(仮称)豊田市博物館
・部分開館:令和6年1月(予定)
・全面開館:令和6年10月(予定)

 
取材:安井友美(TAP magazine編集部)
高校時代、演劇部に入ったことをきっかけに舞台芸術や現代アートに興味をもつ。ぽちぽちと鑑賞活動をしていたら、いつのまにか働く側に。いつまでたってもなぜだか新人。演劇、ダンス、現代アート、音楽、お祭り、伝統芸能などなど、ワクワクの海は広大。

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