REPORT/COLUMN
REPORT|辻 將成 超刻する身体 ダンスパフォーマンス&トーク in寿ゞ家
植村優子(TAP magazine 編集部)

足助の町並みの中に位置する、料亭として使われていた「寿ゞ家」。
この建物で行われた辻將成さんのダンスパフォーマンスに行ってきました。

辻さんは現代芸術家であるとともにブレイクダンサーとしての活動もしています。
今回の出演者は、辻さん含め、ブレイクダンス、ヒップホップ、コンテンポラリーダンス、ポッピンなど、様々なジャンルのダンサー4名です。

会場は2階で、階段をあがると、正面奥に松の木が描かれた舞台があり、昔は宴会が開かれていたという大広間でした。
両側にある窓の片方からは山が見え、明るく開放的な空間です。
座敷の中央部分も舞台となるため、観客は舞台の前に座るのではなく、両側の窓に沿うように座ります。

ダンスパフォーマンスは、微かな音楽が聞こえるなかで、4人のダンサーが舞台と広間の中央など会場の空間すべてを使い、ある時は別々の場所で、あるときは一つの場所に集まって、繰り広げられました。
人の動きに合わせてきしむ床の音も音楽のように聞こえます。
ダンスというと、ジャズやヒップホップ、バレエなどのジャンルがありますが、このパフォーマンスは、そんな型はほとんどなく、人間にはこんな格好ができるのか、というほど身体をのけぞらせたり、逆にまるまったり、絡み合ったりして、身体表現、という言葉の方がしっくりきます。

最後の演目では、観客も立つように指示されました。
そして観客も自由に動き回ってもよいとのこと。ダンサーは広間を縦横無尽に動き回り、それに合わせて観客も動きます。
観客の動きさえもパフォーマンスとなります。
窓の外で静かに降る雨の音もこの空間での演出のひとつのようで、外の音、前にいる他の観客の着ている服の色、広間を照らすオレンジ色の照明、小さい子の話す声さえも、すべて混ざってこの場の舞台が作られているようでした。

4人が絡み合って一つの形を作っている姿は、彫刻が動いているようです。
そういえば、今回のタイトルは「超刻する身体」だった、と思い出し、この作品を通して表現したかったことが少しは捉えることができたのかなと感じました。

ダンス後のトークで辻さんは、「ジャンルとしての障害はなく作品作りができた。ジャンルを越境できるというのもテーマで、逆にバラバラなジャンルのダンサーを集めた方が面白く、ダンスをやっている、やっていないというのも越えられるのでは」と話してくれました。
前日に同じ公演があり、その時と今日では、また観客の反応が違い、全然違う仕上がりになったそうです。
舞台やパフォーマンスは観客も作品を作り上げるひとつの要素で、一期一会のものだなあと、実感しました。

今回のパフォーマンスがあった足助以外にも、豊田市駅前のアートスペース“Art Base Coromo”、コーヒーショップの“EAST ENDERS –Coffee&Chocolate-”でも作品展示が同時開催され、立体作品、平面作品と、パフォーマンスとは違う側面からも辻さんの作品世界を一体的に鑑賞することができる贅沢な期間でした。

植村優子(TAP magazine 編集部)

あいちトリエンナーレのボランティア参加をきっかけに、現代アートの沼にはまりました。
あいちだけでは飽き足らず、全国の芸術祭から、海外の芸術祭まで見に行くようになりました。
全国の芸術祭サポーターと交流する「全国芸術祭サポーターズミーティング」に参加し、アート仲間をますます増やしています。

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