今回は浦野友理さんからご紹介いただきました、デザイナーの山岸美紗さんです。
インタビュー当日は「100年後の豊田市に残したいものはなんですか?」をテーマにした『勝手にミュージアム』(2024/5/26~6/16の金土日)の開催準備中でした。お忙しい中ではありましたが、会場であるArt Base Coromoにお邪魔しました。
-山岸さんはどういった経緯でデザイナーになられましたか?
元々は陶芸をやってみたくて大学に入学しました。1、2年で学部内のいろいろな専攻を体験し、3年次に自分の専攻を決めるのですが、実際にやってみたらデザインの授業がとても楽しくて。問題解決のために理論的に物事を考えていくものづくりの方が自分には合っていると感じたため、プロダクトデザインを専攻して大学を卒業しました。その後専門学校に進学して2年間、グラフィックや映像のデザインについてより実践的な形で学びました。
そこから名古屋で就職、映像の仕事を3年間しました。結婚を機に豊田に戻り、豊田のデザイン事務所に5年間勤めて独立しました。
-Art Base Coromoとはどのような場所ですか?
自分達では「ゆるやかにアートプロジェクトを試みるための拠点施設」と表現しています。アーティストの方の作品展示の企画を中心にしつつ、それだけではなくイベントやワークショップなども行えるゆるやかな空間にしていきたいので、ギャラリーではなくアートスペースと名乗っています。最近では小さなお子さんから年配の方までここに来てくださるようになりました。
小さなスペースなので初めて来てくださるお客さんとはお互いにちょっと緊張したりするのですが、話をしていくうちに打ち解けて、次の企画にも足を運んでくださったりするととても嬉しくなります。
ここではユニットを組んでいる夫が企画、私がチラシのデザインなどアウトプットをすることが多いですが、今後は私も企画に挑戦していこうと思っています。今回の展覧会(『勝手にミュージアム』)は、私が企画しました。
-『勝手にミュージアム』とはどのような企画ですか?
豊田市博物館が4月にオープンしました。博物館は歴史など過去の記録を主に展示していますが、『勝手にミュージアム』では年齢も立場も違う18人の方にインタビューをして、この先100年後に残したいものことなど展示しています。展示できるものは実物を、景色などできないものは写真で展示しています。
100年後に残したいものことはひとによってさまざまです。日常の景色や歴史、自然、技術など、本当にさまざまですね。インタビューは冊子にしましたので、18人の方の思いを読みながら展示を見てもらえるようになっています。
-豊田で活動する理由は何ですか?
自分もクライアントワーク以外の作品を制作して展示したりするのですが、豊田には発表の場が少なく、どうしても名古屋や東京になってしまうというのが共通認識としてあるのを感じています。そのことに不満だけを感じているよりは、自分達で少しでもそういう場を増やしていく活動をした方が建設的だなと感じて、市内の施設を活用した展覧会の企画を夫婦で始めたのがきっかけです。
ただ展示して終わりではく、協力していただくアーティストの皆さんにとって何かしら次の活動に繋るように、展示の様子やアーティストトークなどを記録して冊子を制作したりするなど、なるべく形に残すことを意識しています。そのために自分ができることとして、企画にまつわる発行物のデザインはできる限り良いものにして、関わる皆さんのモチベーションが上がるといいなと思いながら制作をしています。
-現代陶芸家である旦那様と一緒に仕事されてますね
夫とは性格が逆ですね。作品も感覚で作っているように見えてしっかり計算して作っているし、自分の方が計算してデザインを作っているようで感覚派です。
夫婦で仕事をしていると補完し合うように役割ができますね。意見が合わなくてケンカになっても一晩まで。話し合わないと仕事になりませんから(笑)
とても柔らかい雰囲気の山岸美紗さん。インタビューも穏やかに笑い声も多く進められましたが、豊田市で活動をする意味をお聞きしたところで表情や語り口がキリッとなったところがとても印象的でした。山岸さんのお仕事への真摯さを感じた瞬間です。
【豊田のお気に入りの場所】
(うーんと、しばらく考えて)豊田市駅かな。お気に入りというか、私は車の運転をあまりしないので出かけるというと、豊田市駅から電車に乗って移動することが多いです。電車に乗っている間に作品のことを考えたり、実際にタブレットで作成したりする大切な時間です。今もArt Base Coromoの最寄り駅ですしね。
取材:のん(TAP magazine編集部)
美術・芸術は詳しくないけど、人が作り上げた『何か』を見るのが好きです。よくまちをウロウロしています。名古屋グランパスと豊田スタジアムを愛するフツーの主婦。フットワークの軽さと重さを兼ね備える極端なタイプ。