REPORT/COLUMN
REPORT|シンポジウム「あいちトリエンナーレがまちに残したもの」
あいちトリエンナーレがまちに残したもの-長者町・岡崎・豊橋の今と、豊田のこれから-

2019年11月22日、豊田産業文化センターにて「あいちトリエンナーレがまちに残したもの-長者町・岡崎・豊橋の今と、豊田のこれから-」が開催されました。これまでにあいちトリエンナーレのまちなか会場となった長者町、岡崎市、豊橋市の各地域でアートプロジェクトを仕掛けている方々をお招きし、それぞれのあいちトリエンナーレ後の歩みや地域の人たちとの関わりなどについて話し合い、今回閉幕したばかりの豊田のこれからを考えました。

〈パネリスト〉
〇長者町・武藤勇(美術家)
〇岡 崎・鈴木正義(ギャラリスト/Masayoshi Suzuki Gallery代表)
〇豊 橋・黒野有一郎(建築家/sebone実行委員長/大豊商店街代表理事)
〇豊 田・山城大督(美術家・映像作家)
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山城 以下Y):2010年にあいちトリエンナーレが始まって、実際に見に行った周りの方々と話していて、一番話題になったのが長者町でした。ここ、ほんとに入っていいの?というような場所にはいっていったり、町の人との距離が近かったりで、都市部でもこういったことが起こせるんだなと思いました。そこで、まずお聞きしたいんですけれども、あいちトリエンナーレという芸術祭が自分たちの町に来て、それを体験してどうですか?

武藤 以下M):僕としては、あいちトリエンナーレはすごく教育的な効果があったと思います。作品を作る立場の人間としては、どこにアートが根付いていくんだろうっていうところにはあまり焦点が置かれていないので、住みやすいところに住むし、やりやすいところでやる。長者町はまちづくりを前からやっていたし、ギャラリーが一つ二つあったので、ロケーションとしてはいい場所だったと思います。名古屋の美術の構造は、郊外に美大があったりしますよね。もうちょっと都心部に美術があってもいいんじゃないかなと思ってたので、長者町を舞台として、やっていけたらいいんじゃないかと思っています。

鈴木 以下S):(岡崎では)トリエンナーレが終わった後、何か継続されるているかというとなかなか難しいのが現状で。行政が予算をつければ、それを使って活動できますが、自主的に民間でお金を出し合って何かをやるかというと、そこまでは動かない。仕切り直しの意味も含めて、2016年に2回目をやれば変わるんじゃないかと思ってやったんですが、やはり厳しいですね。ただ、その原因は何となくわかっていて、康生地区というのはまちづくりが盛んで、そちらは皆さん力を入れてやっているように思いますが、そこにアートが介入するっていうと…ちょっと分断されているかな、と感じます。

Y:豊田という街は、隙がないというかそんなに余剰のスペースがないんです。どちらかというと空き店舗があるというよりも、市民活動センターや参合館や交流館などの人が集まるための公共施設が整っているんです。なので、自分で場所をわざわざ作らなくていいような印象があります。でもオルタナティブな場所づくりが逆に難しいなとも思います。今は、西町にある「コンテンツニシマチ」という拠点がある地域が盛り上がりつつありますね。建築家がリノベーションをして飲食店やライブハウスとして利用されたりしています。豊田市でのトリエンナーレが終わって、街も市民も盛り上がって、またラグビーワールドカップも並行開催ということで、KiTARAの周辺も整備されました。

黒野 以下K):(豊橋の)seboneとトリエンナーレの組織とは、当然運営などのやり方も全然違うので、2016年のトリエンナーレを経験して、色々影響を受けました。トリエンナーレの場所のセレクトって、やっぱりまとまりのあるコミュニティがある場所に落としていっているような気がします。そうじゃないと、もっと大変だと思う。

Y:それでは、豊田市の今後について、お3人方からアドバイスをお願いします。

K:僕もトリエンナーレの時に初めて豊田市に来たんですが、今日で2回目です。豊橋にも共通することなんですが、土地感ができるとその場所に訪れやすくなると思います。僕は岡崎のことがすごく気になっていて…地理学的な話になりますが、岡崎ってかなり坂があって、山の手と下町みたいなエリアがあるんです。豊橋は意外と平坦なんですけどね。岡崎でまちづくりが盛んな理由って、その場所ごとでのエリア意識がすごくあるんじゃないかと思います。いろんな街づくりの人がいて、そのエリアを自分たちのエリアとして盛り上げていこうみたいな意識が強い。そういう点では豊田はどうなんでしょうか?

参加者:豊田市は広いので、はっきりいうのが難しいんですが、合併して加わった山間地は市街地とはまた違う動きをしています。そういう意味では、どこの街も同じだと思うのですが、中心市街地は中心市街地の問題があるし、山間部は山間部の課題があります。でもそこにそれぞれキーマンのような存在や団体がいます。

K:そうですね、結局は人だと思うのですが、昔ながらの土地柄とか人とか、そういった部分にアートが入っていったときに、それぞれの場所で、それぞれのやり方があるんじゃないかなと思います。

S:僕が今考えていることとしては、展覧会をやっていくことに意味があるのか?と。イベントをやれば結果がすぐ出るじゃないですか。入場者数が何人とか。すごくわかりやすいんですけれども、教育的なものってすごく長いスパンで考えないといけない。だからなかなか税金が出しづらいのも事実ですよね。でも僕はトリエンナーレに参加して、一過性で終わってしまって何も残らない、という経験をしたので次世代に残す活動をもっと積極的にやっていかないといけないなと思っています。具体的にはもっとアーカイブに力を入れて、そこに行けば常に美術の情報を得られる場所を作ったりしたらよいと思います。その方が地域に根付くし、地域の文化を掘り起こすのにもいいんじゃないかなと思います。岡崎ではジャズの分野で、内田修さんのドクタージャズスタジオというものがありまして、内田先生が残した膨大な音楽の音源があるんですが、これが非常にレベルが高いんです。一般公開されていて、調べれば調べるほど過去の音楽史が勉強できます。それを整理するのも大変なんですが、そういうアーカイブの整備に力を入れていったらいいと思います。あとは教育面で子どもたちに対する教育プログラムなど、次世代に残すような事業に特化していったらいいと思います。

M:個人的には展覧館というものに消費的な感じを抱いていて。アートを消費するばかりで、いいのかなあと。どこでアートが生まれて、どこにそのアートが向かっていくのかということをどういうふうに山城さんは考えているのかなと(笑)

Y:え!?(笑)

M:ナデガタは割と展覧会自体がアートを生産する場所であったりすると思うのですが。

Y:そうですね。逆にまちづくりのような人たちの時間軸で考えたことがないので、今市民アートプロジェクトで活動をしていて新鮮な感じがしています。1年目はかなり苦しみました。何回やっても、展覧会が終わらなくて、「これいつまで続くの?」っていう(笑)。でも今は、一回一回にホームラン打つのではなくて、みんなでそれぞれが上がっていく、みたいな方法を考えたいなと思っています。

M:ナデガタのようなコンセプトが、アートを生産しているような気がするのでそういったことを続けていけばいいんじゃないでしょうか?(笑)

(一同)(笑)

Y:豊田にはいろいろなプレイヤーがいるので、その人たちとタッグを組んでどんどん前に進んでいきたいと思っています(笑)
 
 
※タブロイド版「TAP MAGAZINE 最終号」より再掲
 
 
〇長者町・武藤勇(美術家)
自分たちで見たいアートを見るための活動としてN-markを発足。2010年~2012年アートラボあいち運営・ディレクション、あいちトリエンナーレサポーターズクラブ事務局(2010年)。2012年より長者町トランジットビル企画・運営。あいちトリエンナーレ2019と合わせて長者町アートファーミングを開催。

〇岡崎・鈴木正義(ギャラリスト/Masayoshi Suzuki Gallery代表)
徳川家康のふるさと岡崎市康生町という歴史ある城下町で、西三河では唯一の現代美術のコマーシャルギャラリーを経営。2013年、2016年の岡崎会場では岡崎アートコミュニティ推進協議会メンバーとして市民活動をサポート。その後も現地の現アート文化振興に携わる。

〇豊橋・黒野有一郎(建築家/sebone実行委員長/大豊商店街代表理事)
あいちトリエンナーレ2016の豊橋会場となったsebone(豊橋駅の駅南エリアに建つ水上ビルを中心とするアートイベント)の中心的人物で自治体・行政と連携したアートによるまちづくりを展開している。

〇豊田・山城大督(美術家・映像作家)
アーティストユニット・Nadegata Instant Partyとして2013年のあいちトリエンナーレへの参加をきっかけに名古屋に移住。その後2017年からとよた市民アートプロジェクトのRecastingClubのディレクションに携わる。

あいちトリエンナーレがまちに残したもの-長者町・岡崎・豊橋の今と、豊田のこれから-

日 時:2019年11月22日(金)19:00-21:00
場 所:豊田産業文化センター(豊田市小坂本町1-25)

主 催:あいちトリエンナーレ2019豊田会場実行員会

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