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COLUMN|豊田市民音楽祭2020番外編開催によせて
正木隆(豊田市民音楽祭2020番外編 実行委員会)

-アマチュアバンドに発表の場を-
そんな思いで2011年に復活させた“豊田市民音楽祭”
本当なら今年は10周年のメモリアルイヤー
オリンピック成功の勢いに乗っかって、大々的に10周年祭を開催する予定でした
 
しかし、突然にやってきたコロナ…
そして新しい生活様式…
 
何よりつらかったのは、早い時期にライブハウスでクラスターが発生し、音楽を演奏する環境が危険と思われてしまったこと
 
そして、音楽など生きていく上で特に必要ないと思われてしまったこと
 
我々音楽祭実行委員の職業は、音響屋であったり、大型音楽フェスの飲食ブースの責任者であったり…
もちろんバンドマンでもあるのですが、あなたたちは今の社会に必要ないと烙印を押されてしまったわけです
 
確かに不要不急か?と問われ、まあ我慢の時なのか?と、この時点では考えましたが、
時間が解決するだろうと思っていましたし…
 
その時間がとてつもなく長いのでは?と思うようになった頃、自分の存在とは何か?
このままひたすら待ち続けて良いのだろうかと、かなり不安に思いました
働き盛りの世代に、あなたの仕事は今の社会に必要ありませんと言う宣告は、そうとうな重さで心の奥底に効いてきました
 
音楽イベントは延期に次ぐ延期の末、今年度の開催中止決定 
季節的な催事は即刻中止
 
それでも世間の考えは、来年になればさすがに元に戻るだろう
来年は普通に開催出来るだろう
だから今年は我慢しようと、ある意味楽観的なものでした
まあ、2020年って年はなかったことにしようなんて感じで…
 
でも実際の現場では、そうではないという思いが確信に変わりつつありました
 
それは、相次ぐライブハウスの閉店と言う形でやってきました
ライブハウスは、アマチュアバンドが最初の目標とし、切磋琢磨し育つ所
テクニカルスタッフも、そこで学び腕を磨くところです
(そもそも豊田にはそういった場所が少ないからこそ、音楽祭復活を企てたのに…)
 
そんな場所がなくなると言うことはどういうことか
そこから育ってきた者にしか分からないことなのかもしれませんが、いったん失ってしまったものは、そう簡単には元には戻りません
いや、これでもう二度と元には戻らないんだなと実感した時でした
 
その辺りから気持ちが変化してきました
 
今年はダメでも来年は出来るかなと考えていたら、来年もきっと出来ない
雨はいつか止む 夜はいつか明けると言うが 同じ日々はもうやって来ない
 
そう考えた時、今年音楽祭を開催出来なかったら、もう二度と開催出来ない
今年どんな形でも開催できたなら、来年もまた開催出来るだろう
 
そう考えるようになりました
 
 
しかし、実行委員会内ではずっと議論が続きます
 
正直これを書いている今の時点でも、中止するべきだと言う意見がありますし、どんな思いで開催を熱望しようとも、判断しなきゃいけない瞬間がやってくるでしょう
 
桜の咲く頃には  イベントはすべてキャンセル
暑くなる頃には  甲子園も吹奏楽コンクールも中止
紅葉の頃には   運動会 体育祭 学園祭も中止
 
みんなが我慢したこの一年の最後に、自分たちだけがイベントを開催して良いのだろうか
もしここでクラスターが発生したら、二度と音楽イベントは開けないんじゃないだろうか
大人として、仕事として、業界に携わっている以上、何らかの責任をとらないと…
 
そんな思いに押しつぶされそうになりながらも、準備は続きます
 
 
豊田市民音楽祭2020は番外編と銘打ち、一般公募は行いませんでした
(9年の間に出演してくれて、想いを共有してくれているだろう仲間と開催しようと)
 
会計的にはかなり苦しいが、広告協賛を募るのはやめました
(世の中みんな苦しいわけだし、最悪開催出来なくなる可能性だってある)
 
簡単にあきらめてしまうのではなく、どうしたら開催出来るのか模索しました
(豊田市民文化会館さんのご協力で、コロナ禍でのライブのあり方を検証しました)
 
チラシの制作などは行わず経費削減・司会者のブッキングもあきらめました
(ただし音響・照明のクォリティはそのまま、文化会館小ホールで開催することにもこだわりました)
 
 
さて、本番まで3週間 万全の対策をして
 
そして幕が下りて2週間後
 
たずさわったすべての皆さんが健康なら、豊田市民音楽祭2020番外編は成功だったということになります
 
 
もちろん、成功させるべく努力しているのですから
必ずや成功するはずなんです
 
 
-豊田市のアマチュアバンドに演奏の場を-
それが唯一の我々の願いなのです
 
 
豊田市民音楽祭2020番外編 実行委員会

正木隆(豊田市民音楽祭2020番外編 実行委員会)

まさき たかし
音響家・有限会社まさき代表

豊田市出身1963年生
学生時代からバンド活動を始め、名古屋市のライブハウス等に出演
市内楽器店に10年間勤務の後、1997年独立起業
豊田市唯一の音響屋として、数多くのイベント音響を手掛けるかたわら、楽器販売・楽器修理・音楽教室の開催等、豊田市内の小中学校を中心に、日々活動を続ける
他に、豊田市民音楽祭の運営、豊田ご当地アイドルStar☆Tへの楽曲提供、演劇音楽の制作、自身の音楽ユニット木蓮堂で演奏活動も行っている

豊田市民音楽祭2020番外編
日 時:2020年12月13日(日)10:00-17:30
場 所:豊田市民文化会館小ホール
運営協力費:500円

豊田市民音楽祭

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