REPORT/COLUMN
INTERVIEW | 人と人を紡いでいく 羊毛作家「ひつじ工房Meadow&sheep」 須賀いづみさん
須賀いづみ(羊毛作家)

前回のガラス作家・岩月直美さんからのご紹介で、インタビュー5人目は「ひつじ工房 Meadow&sheep」の須賀いづみさんです。須賀さんはニュージーランドの牧場から羊毛を仕入れ、ナチュラルカラーや染色した羊毛で作品を創作しています。今回は須賀さんの自宅兼アトリエでインタビューしました。
 
明るい笑顔で迎えてくれた須賀さんが着ていた服は、羊のイラストが描かれた緑のTシャツ!さらに案内してくれたどのお部屋にも羊毛作品やカラフルな毛糸玉がたくさんありました。須賀さんが最近はまってるという、アンドレ・リュウのバイオリンの音楽を聴きながら羊毛作家になったきっかけやものづくりについてのお話をお伺いしました。
 

 
-須賀さんが羊毛作家になったきっかけを教えてください。
28歳までは銀行に勤めていました。もっと上を目指したかったけれど、社風や女性の先輩を見ているとこれから先のことに希望がもてないなと思って。その時から「海外の違う文化の中で生活がしたい」という気持ちがあって、銀行員を辞めてワーキングホリデーを利用してニュージーランドに行きました。飛行機が着陸するクライストチャーチの空港は牧場の中にあって、窓から外を見た時に緑の草原の中に白い点々がいっぱいいたんです!それが私と『羊』との出会いでした。
 
クライストチャーチにはアートセンターという場所があって、そこで毎週末開催しているマーケットが面白くて見に行ってたんです。そこで出会ったのが、羊毛を紡いでるおばあちゃん。おばあちゃんの後ろには羊毛の山やセーターや小物がたくさんあって、すごく素敵だったんです!で、速攻で弟子入りを志願しました(笑)その方からアートセンターにギルドと呼ぶ婦人会のようなところを紹介してもらって、そこで糸紡ぎや染色を習いました。
 


 
日本のようにカリキュラムがある訳ではなく、一通り技術を習得した後は「あとはあなたの世界だから自由にしてね」という感じで。その後は「ナバホプライ」という糸を3本撚りにする技術を習得するために、カンタベリー地方の紡ぎの名手マリーおばあちゃんの元に行きました。今でもイベントに出店するときはマーケットで出会ったおばあちゃんとマリーおばあちゃんの写真は必ず飾っているんですよ。それからは「羊毛を手に入れたい、じゃあ牧場に行こう!」と決めて、クライストチャーチから車で1時間ほど離れた場所にあるダーフィールドの牧場に住み込みで働き、そこで羊の毛をいただいて休みの日はずっと紡いでいました。
 
 
-日本に帰国してからはどのような活動をしていたのでしょうか?
ニュージーランドで夫と知り合い、日本に帰国し結婚しました。子供が生まれてからはしばらく子育てに専念していましたが、その傍らなんとなく制作は続けていました。その頃は、自分で身につけることはせず作ったものは人にプレゼントしていましたね。
ある時、豊田市の写真館兼アトリエがある場所で「展示をやらないか?」という話がきて、そこで初めて個展をすることになったんです。いきなり個展!?とびっくりして、作品をあるだけ持って行き自由に作品を展示しました。
 
子供が保育園に行くようになってからは、家から通える範囲と決めてクラフトマーケットに出店していました。それから縁あって足助の手仕事庵にも出店するようになり、またそれがきっかけで百貨店の出店の話もくるようになりました。百貨店では、お店の大きな名前を背負っているので物作りにおける責任を感じましたね。


 
 
-須賀さんの羊毛のこだわりは?
羊毛は、私が滞在していた牧場から直接交渉して仕入れています。お互いの好みも知っているし、何より信頼しています。羊も人間のようにストレスで毛の状態が変わるんですよ。耳元で引っ張ってぶちぶちと音が鳴らなかったら問題なしです。日本でも羊毛は流通していますが、ニュージーランドに少しでも恩返しできればという気持ちもあってこだわっています。

※羊毛は白だけではなく、茶色や黒色のものあります。『カラードシープ』と呼ぶそうです。

ちなみに染色で使う藍染の藍は自宅の庭で育てているんですよ。それ以外には豊田市の松平の農園で玉ねぎの皮をもらって染めたり、今の時期(※インタビュー時5月下旬)はよもぎで染めたりしています。最近は新たに染めることはせず、染めたけどそのままにしているものや思い通りに染まらなかったものを新しい手法で活かしていったり、面白いものが作れたらいいなと思って色々試みています。
 
 
-須賀さんはもともとものづくりが好きだったんですか?
私は愛媛県の川之江市(※現在は合併し四国中央市)の出身で、そこは「紙のまち」と呼ばれています。今は大手製紙工場があるけれど、昔は紙の手漉きの工場が多くあって、小さい頃はそこでよく走りまわって遊んでいました。曾祖父は下駄を作る職人だったんですが何でも作る人で、私が「鳥かごが欲しいな」と言うと作ってくれたのを覚えています。周りに職人さんがいる環境で育ったことは、今となってはとても重要なことだったんだなと思います。今、工芸は「芸術」にカテゴリーされがちですが、もとは日常生活で使われていたもの。最近は便利なものが生まれていく一方で、伝統が衰退していく危機感もあります。日本の生活の中で培われてきた手仕事や伝統を残していくことの大切さや難しさを日々感じますね。
 
 
-先日開催した、6名の女性作家さんによる「Feeling of Spring-春の予感-」。企画したのは須賀さんと聞きました。初日に行きましたがとても盛況でしたね!
 
花遊庭で開催された「Feeling of Spring-春の予感-」の会場風景

結婚して、子育てして、仕事して…なおかつ自分の世界を作っている女性はすごいと思います!そういう仲間を応援したいし、一緒に何かやりたいですね。出店する人も、来た人も楽しめる場所ができたらいいなと思います。
 
 
今回のインタビューでは、羊毛を紡ぐところを実際に見せていただきました。須賀さんの横には前回インタビューをした岩月さんの花瓶や、友人の作品が並べられていて作家一人一人の関係をとても大切にしていることが伝わってきました。「紡ぐ」という言葉には、「一つ一つの出来事が形を作る」という意味もあるそうです。須賀さんが紡ぐ羊毛の先にはどんな世界が広がっていくのか、今後の活躍が楽しみです!

須賀いづみ(羊毛作家)

すが いづみ
 
豊田のお気に入りの場所
「御立公園」
木がぽつんとあって、下が草地で…羊がいないだけでニュージーランドやねん!定期的に芝生がカットしてありとても綺麗です。大自然の中にいる気分が味わえます。

 
取材:森井早紀(もりいさき)
TAP magazine編集部。アンダーグランドな音楽と美術と映画をこよなく愛すちょっと変わった人。橋の下世界音楽祭に衝撃を受け、豊田の街に魅力を感じ始める。自身も作家活動を行なっており、2020年に豊田市美術館ギャラリーで自ら企画したグループ展『HELL THE TRIP』を開催。豊田の魅力を発信しながら、何やらおもしろいことを企んでいます。

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