REPORT/COLUMN
REPORT | 文化は山奥にあり。豊田の農村舞台
ハラプロジェクト・七夕歌舞伎 in 農村舞台寶榮座

演劇パフォーマンス集団・ハラプロジェクトの七夕歌舞伎の公演を観に、農村舞台・寶榮座(ほうえいざ)へ行ってきました。
毎年この農村舞台で七夕歌舞伎を開催してきましたが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大で中止になったため、久しぶりの公演だそうです。
 

寶榮座の舞台

寶榮座は、観光で有名な足助の古い町並みから5㎞ほど離れた山の中にあります。
道を間違えているのではないかと思うほど車の気配がない道を走ると、山の中腹の道路に何十台という車とその前に木造の建物が見え、寶榮座に着いたとわかりました。
急に多くの人が集まっているのを見ると、まるで砂漠の中でオアシスを見つけた気分でした。
寶榮座は、野外劇場の造りとなっており、木造の建物の一面が客席に向かって開かれているところが舞台で、客席は地面に直接椅子が並べられていました。
客席の上には天幕が張られ、雨天でも対応可能になっています。脇には屋台があり、ビールを飲んでいる観客もいてお祭りのような雰囲気でした。
(もちろん感染症対策は徹底していました!)
 
今年は、最初にNEW古典歌舞伎「俊寛(しゅんかん)」、次に岩手の鹿踊り(ししおどり)、最後に民謡舞踏と3部構成です。
 
「俊寛」の能登守教経役の衣装

最初はNEW古典歌舞伎「俊寛」。
女性が歌舞伎に出演し、しかも男性の役を演じているのを初めて観ました。
その部分が「NEW」なのかな、と思って観ていましたが、なんと今度はBGMにクラシック音楽が流れたのです。
クラシック音楽は「NEW」ではありませんが、西洋音楽を歌舞伎に使うのは新しい!と驚きました。
しかし聴いているうちに次第に違和感はなくなりました。
私にとってはクラシック音楽の方が歌舞伎音楽よりなじみがあるからかもしれません。
むしろ、演目のあらすじを知らなかった私には、その場面が喜んでいる場面なのか悲痛な場面なのか、クラシック音楽の名曲を使っていることで心情を読み取りやすかったです。
 
2.5mのササラを付けた状態の鹿踊りの衣装

次に披露されたのは、岩手県の伝統芸能「鹿踊り」。
御祈祷奉納やお盆の先祖供養などで踊られているそうです。
前方に太鼓を担ぎ、打ち鳴らしながら踊ります。
衣装で印象的だったのは、鹿踊りの名前のとおり、本物の鹿の角を使い装飾した頭部です。
鹿のような細長く枝分かれした角を付け、顔面は布を垂らして隠されていたのが神秘的でした。
本来は、2.5mもある細長い板状の装飾(ササラと呼ぶそうです)を腰に差して踊るそうですが、今回の舞台では天井に突き刺さってしまうため外しての演舞でした。
また、8人で隊形を変化させながらの演舞だそうですが、女性ひとりでの演舞でした。
板状の装飾を付け、8人での演舞だったらさぞ迫力があるのだろうな、と思いましたが、女性ひとりの演舞もとても力強く、先ほどの歌舞伎もそうですが、女性が活躍する公演だな、と思いました。
 
民謡舞踏の様子 photo:安野亨

最後は民謡舞踏。
「民謡舞踏」はハラプロジェクト主宰の原智彦さんの造語で、今回の演目は「生活の中から生まれて人から人へ歌い継がれたエッセンスを大事にしたリアル唄」*だそうです。
豊田市を拠点に民謡の活動をしている芳泉会の皆さんが、三味線と太鼓と唄で民謡を披露しました。
「挙母小唄」など豊田市にお住まいの方にはなじみの唄もあるようで、客席では一緒に口ずさんでいる方もいらっしゃいました。
途中からハラプロジェクトのメンバーが民謡に合わせて踊ります。
いくつかの曲のうち、切ない曲調で表情ひとつひとつまで心情が表現され、しんみりした雰囲気が伝わってきた踊りが印象に残りました。
そして「俊寛」で主役を務めた主宰の原智彦さんが、今度は黒いスーツに黒い帽子でソロパフォーマンスを披露し、75歳という年齢を感じさせないキレのある動きで観客を惹きつけました。
歌舞伎から舞踏、民謡まで、一度に様々なジャンルが観られ、大満腹な舞台でした。
*詳しくは[INTERVIE | 『ALL TOGETHER GET HIGH』は「誰とでもいっしょにいける」ということ]をご覧ください。
 
民謡舞踏に登場した原さん photo:安野亨

農村舞台は昔、集落の娯楽として歌舞伎を演じられてきたそうです。
歌舞伎というと、私は名古屋市の御園座など大きな舞台でしかやらないものだと思っていましたが、実はもっと身近な場所にあったのだと気づかされました。
寶榮座では、今でも寄席や講座、ロックバンドのライブ公演(!)など、定期的にイベントを開催しているそうです。
七夕歌舞伎のお客さんも、半分は地元の方だったそうです。
これまで私が訪れた地域を巻き込んだプロジェクトでは、地元の方は来た人をもてなす側の姿ばかりだったため、これこそ地域に根差した文化が続いているといえるのではないかと思いました。
歴史的な建築物をただ保存するのでなく、活用することで文化をつなげていくという、伝統を新しい形で伝えていく可能性に出会えた日でした。
これからは寶榮座の公演も定期的にチェックしていきたいと思います。
 

ハラプロジェクト・七夕歌舞伎 in 農村舞台寶榮座

日時:2021年7月4日(日) 開演14:00(開場13:30)
場所:寶榮座(諏訪神社境内:豊田市怒田沢町平岩5)
主催:農村舞台寶榮座協議会
主管:ハラプロジェクト
協力:萩野自治区・萩野NPO結の家・巴一座

 
取材:植村優子(TAP magazine編集部)
あいちトリエンナーレのボランティア参加をきっかけに、現代アートの沼にはまりました。
あいちだけでは飽き足らず、全国の芸術祭から、海外の芸術祭まで見に行くようになりました。
全国の芸術祭サポーターと交流する「全国芸術祭サポーターズミーティング」に参加し、
アート仲間をますます増やしています。

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