REPORT/COLUMN
REPORT | 作品鑑賞は一期一会 豊田市美術館鑑賞プログラム
鑑賞入門プログラム2021「みる×かんがえる×つたえる」鑑賞会

美術館で作品を観ているとき、「よくわからないな」と思うと、あまり観ないまま次の作品に目を移してしまうことはありませんか?
または、「この作品面白い!」と思っても一人で来ているから他の人に話すことができなくてもやもやとする…ということはありませんか?
(一緒に行く人がいないのは私だけでしょうか…)
 
そんな時私は、もやもやや「よくわからない」を話す機会として、美術館で開催しているガイドツアーなどの鑑賞プログラムに参加することがあります。
鑑賞プログラムで、他の人の感想を聞いて、「他にも同じことを思っている人がいた」となんだか安心したり、「そんな風な見方もあったのか」と新しい発見ができたりと楽しいです。
あと、観た作品を忘れてしまいがちなので、じっくり見たり、人の話を聞いたり、考えたりすることで印象に残って、たとえ結局わからないままでも、その時感じたことを忘れないでいられます。
そんな鑑賞プログラムに皆さんにもぜひ一度参加してみてほしい!と思い、その様子をレポートします。
 
今回は、豊田市美術館の鑑賞入門プログラム2021「みる×かんがえる×つたえる」鑑賞会に参加してきました。
豊田市美術館には作品ガイドボランティア(以下、ボランティア)さんがいて、企画展や常設展で作品ガイドをしてくれます。
特徴的なのは、一方的な解説ではなく、参加者との対話を交えながら、作品の魅力を紹介してくれることです。
「みる×かんがえる×つたえる」鑑賞会では、会場の中からひとつだけ作品をとりあげて、ボランティアがファシリテーター(司会、進行役)となって参加者と鑑賞します。
まず講堂でスクリーンに映された作品を観ながらボランティアと参加者で意見や感想を話します。
その後、展示室に移動し、実際の作品を鑑賞します。ここで話はせず、静かに鑑賞します。
講堂に戻り*、スクリーンの作品画像を観ながら、実際の作品を観た感想や意見について話をします。
ちなみに今回の作品は、1932年生まれ、戦後日本の前衛美術グループ「具体」で活躍した、田中敦子さんの《Work 1963 B》でした。
40分近くのプログラムで、普段、私が作品を観る時間と比べると非常に長く思えますが、実際に参加すると時間が経つのがあっという間でした。
 

講堂で作品画像を観ながら、「何が描かれていますか?」と質問されると、「丸がいっぱい」「線がリボン」「たこ焼きにみえる」「電気と配線」など率直な感想が飛び交います。
実際の作品の前に行くと、スクリーンでしっかり観たからか、実際の作品は印象が違う、と気づきます。
筆のタッチや絵の具の盛り上がり、発色も画像と全く違ってみえました。
「印象は変わってみえましたか?」と質問されると、「あっさりしていた」「絵の具が重なって重厚感がある」「マットな質感と艶っぽい質感と描き分けられている」といった意見が出ました。作品の前で他の人の意見を聞きながら鑑賞もいいですが、スクリーンの作品画像と実際の作品の違いを感じられて、やっぱり本物を観ないとわからないこともあるなあと、皆さんの感想を聞きながら思いました。
鑑賞を重ねていくと、一人の意見に触発されて、「私もそうみえるけど、この部分はこうじゃないかな」「さっき他の方が言ったように…」と新たな感想や意見が次々と出てきました。
一人ひとり、これまでの経験や好みがそれぞれ違うように、似ていても全く同じ感じ方をする人はいないと改めて思いました。
 
ボランティアの方に伺った話では、展覧会は通常2,3か月開催しているため、会期の最初と最後でも印象が変わるし、その日の自分自身の気分でも印象が変わるそうです。
ベテランのボランティアの方は作品についてよく知っているけれども、逆に作品を観るとき知識が先にでてきてしまうので、知らない人の意見の方が新鮮で、新たな発見があるそうです。
同じ作品を何回観たとしても状況によって同じ感じ方は1回としてない…。
鑑賞会でも一人で観るときも、作品との出会いは一期一会だと思いながら、1回1回を大切にしていきたいと思います。
鑑賞会の質問のひとつに、「この鑑賞会に初めて参加した人は挙手してください」というのがありましたが、手を挙げた方は1人のみで、ほとんどがリピーターだったようです。
何回も参加したくなるほど鑑賞会に魅力があるのだと思いますが、新しい参加者が増えたらさらに新しい発見ができるのかもしれません。
自分の意見は恥ずかしくて言えない…という方も他の人の感想や意見を聞くだけでも発見があると思います。
参加したことがない方はぜひ行ってみてください。
鑑賞会は感染症対策をとりながら今後も開催される予定です。
詳しくは豊田市美術館ウェブサイトをご確認ください。
 
 
*通常は展示室を会場としていますが、感染症対策のため、現在は講堂で開催しています。また、鑑賞会の内容は作品によって変わります。

鑑賞入門プログラム2021「みる×かんがえる×つたえる」鑑賞会

日時:2021年8月28日(土)14:00-15:00
会場:豊田市美術館講堂ほか

 
取材:植村優子(TAP magazine編集部)
あいちトリエンナーレのボランティア参加をきっかけに、現代アートの沼にはまりました。
あいちだけでは飽き足らず、全国の芸術祭から、海外の芸術祭まで見に行くようになりました。
全国の芸術祭サポーターと交流する「全国芸術祭サポーターズミーティング」に参加し、
アート仲間をますます増やしています。

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