REPORT/COLUMN
INTERVIEW|魂の絵筆が伝え続けるものとは 万年青(おもと)鉢の絵付作家:田代智裕さん
絵付作家・田代智裕

今回のインタビューは前回取材の梶千春さんの紹介により、万年青(おもと)鉢の絵付作家の田代智裕さんです。

万年青とは、日本の伝統的な園芸植物で、縁起物としてお祝いの際に贈られる植物としても有名です。
江戸時代に流行し、大名たちが栽培に興じたり、徳川家康が江戸城に入城するときに家臣から献上された歴史もあります。

「HYBRID BUNKASAI」や「とよたまちなか芸術祭」など、とよた市民アートプロジェクトの場でも多く発表をされている田代さんの画風のエネルギーは一度見たら忘れることができません。

「なぜ万年青鉢に絵を描いているの?」
「独特な世界観の正体は?」

今回は、鮮烈な作品たちが生まれる経緯をお聞きしてきました。
@tashiro__t インスタグラムより

 

ー以前から絵を描くお仕事をされてきたのですか?
映画看板や舞台道具など美術装備を制作する会社に入社したので、絵を描いたり、オブジェを作るなど、仕事として制作をしてきました。
昔はデジタルデザインの制作ではなかったので、看板や立体図面などは全て手描きです。
でも手を動かしてなにかをつくることが楽しく、いろいろな作品を手づくりしましたね。もうなくなってしまいましたが、豊田にあった劇場の看板も描いた事があります。
今は万年青の鉢を中心に制作をしていますが、平面作品なども描いています。

2017.9 岡崎の万年青専門店「宝生園」にて初めて万年青を知った頃に描いた絵B4 ケント紙 色鉛筆

ー制作の中心とされている万年青との出会いはどのようなかたちだったのでしょうか?
「宝生園」四代目園主 水野圭子さんから「万年青をもっと若者に普及させたいので、デザイン性のある鉢に仕上げてくれないか」という依頼を受けた事がきっかけです。
今まで万年青の鉢は染付(そめつけ)など伝統的な紋様の鉢が主流でしたが、現代的なモチーフを万年青の力強い雰囲気に合わせて描いてみたんです。
すると結構普及してきて、今ではいろいろな万年青専門店が若者向けのデザイン鉢を合わせて販売するようになりました。
でも僕が鉢デザインの第一人者だと思っています(笑)
2017 年からとよた市民アートプロジェクトの活動に参加し、「HYBRID BUNKASAI」や「とよたまちなか芸術祭」のほか「橋の下世界音楽祭」でも出展し、万年青の魅力を発信してきました。

2017.11 旧東高「On Stage! On High School!」 絵付けをした鉢に合う万年青を「宝生園」四代目園主 水野圭子氏が植える形でコラボ

ーまさに概念を変えた第一人者ですね!
田代さんにとっての万年青の魅力とはなんですか?

万年青のこの葉のあり様をみてください。
渦を巻いていたり、激しく波を打っていたり、力強いでしょう。
この葉芸(はげい)はまさに生命力の塊のようなものを感じさせる魅力があります。
葉芸の種類も多様で、他の生命体には感じられない迫力が万年青にはあり、それを感じて以来、万年青とコラボレートして作品制作をしています。

2019 「Check in Counter Culture」展示作品

ー万年青鉢のほかに平面作品も描かれているとのこと。
モチーフに菩薩などが描かれメッセージ性があるように見えますが、どのようなコンセプトがあるのでしょうか?

2020.11 「安穏ボサツ」 緑陰ギャラリー展示作品

実は 3 年前に病気になり、それがきっかけで菩薩を多く扱うようになりました。
このモチーフには「安穏あんのんボサツ」という名前があります。
病気になって間もない時期にコロナウイルスが流行し始めました。
昨今、疫病や戦争で落ち着かない日々が続いていたこともあり、世の中がもっと穏やかで安心できるようになってほしいという願いがあります。

いろいろな局面で僕の中ではまだまだ安穏な日々は遠いように思いますが、自分の表現で願いを伝え続けていきたいと思っています。

2022.10 「とよたまちなか芸術祭 2022」展示作品

絵付作家・田代智裕

豊田のお気に入りの場所
「橋の下センター」
橋の下センターはライブなどでよく行きます。行くと誰か知り合いがいたり、酔っ払いがいたり(笑)
みんなと一体になれる拠点だし、僕としては居心地が良くて落ち着く場所です。

取材:森かん奈(TAP magazine編集部)
博物館や古美術商など様々な視点からアートを見てきました。博物館とおでんは似ているような気がします。
いろんな人やモノが一緒に存在している空間って面白い、その面白さを伝えるにはどうしたら良いか。
日々ゆるゆると考えています。おでんの出汁の様な存在になりたいです。

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