REPORT/COLUMN
COLUMN | 「私のアートの見方」 第5回・Don’t feel, think.
熊谷充紘(豊田市中央図書館・広報)

「アートの見方がわかるような本をお探しということですね。
かしこまりました。ご希望に添える本を提案できるよう努めます。
まず、差し支えなければ、どういった理由でこのような本を図書館でお探しか、教えていただけますか? 」
 
「・・・なるほど、アート好きのご友人と現代アートを美術館に観にいったら、何がいいのか全然わからなかったと。
ご友人は難しいことは考えずにただ感じればいいと言うけれど、何も感じない自分は感受性がないのか不安になられた…
わかります。わたくしにも同じような経験がありましたから。
考えるな、感じろ、とよく言われますが、感じるためには、まず感じるための身体が必要です」
 
「・・・失礼、いやらしい話とかでは全然なく、たとえば、明治31年に国木田独歩が『武蔵野』を書いていますが、そのなかでツルゲーネフの『あいびき』を 1 ページ以上引用し、
『あいびき』を読んで武蔵野の自然美や落葉林の美しさがわかったと言っています。美しい風景があるからそういう文章が生まれたのではなく、風景を愛でる文章があったから、自然を見る目が生まれてくる 、と」
 
「・・・そう、人間は言葉によってできていて、言葉で世界を見て、感じている。どのような言葉に触れてきたかによって、一人ひとり、世界の見方、感じ方は異なる、ということです。
なので、アートの見方がわかる本を探していらっしゃるお客様は素晴らしい!ご友人に言われた「ただ感じればいい」を鵜呑みにせず、まずアートの言葉に触れようとされているのですから。
アートの言葉が自分の中にあってこそ、アートを見る目が生まれてくる」
 
「・・・おっしゃるとおり、いきなり「アートの見方」のような本を読むのはハードルが高いかもしれません。
まず「アートの見方」のような本を読むための言葉に触れることがオススメです。
小説でも、料理書でも、お客様に関心のあることの中から、アートとの関係性を作っていけるような本を提案させていただきます」
 
「・・・なるほど、普段お子さんの絵本を選びにこの図書館に来館されていて、今までお子さんの絵本を探すためにスタッフにオススメを聞いてきたけれど、今回は自分用の本をということでお尋ねくださったのですね。
いつもご利用頂きありがとうございます。そうですね、お子さんとも一緒に探せるので、今回は絵本にしましょうか」
 
「・・・ええ、絵本にもアートへの架け橋になるような本はたくさんあります。
アートって世界を新たに 見る方法でもあるので、世界をありのままに見ることができる子どもむけに作られた絵本は、大人にとって世界を新たに見る方法の一つと言えると思います。
例えば、アーティスト・鈴木康広さんの『ぼくのにゃんた』や『りんごとけんだま』 はいかがでしょうか。
ものの見方の面白さを知ることで、世界がどこまでも広がっていきます。
絵本を面白いと思ったら、鈴木さんの作品集『近所の地球』もオススメです。
写真やドローイングも多く、平易な言葉で書かれ ているので、絵本の延長線上で楽しめると思います。
『近所の地球』は 芸術書コーナーにあるのですが、この本がある棚をざっと眺めてみて、気になるタイトルがあったら手にとってみるのもオススメです」
 
「・・・こちらこそありがとうございました。ぜひ、またアートを観にいってみてください。
そしてまたわからないことなどありましたら、いつでもお気軽にお尋ねください。
自分で考えるためのきっかけになる言葉が、図書館には無数にありますので」

熊谷充紘(豊田市中央図書館・広報)

くまがい みつひろ
フレデリック・ワイズマン監督の映画『ニューヨーク公共図書館』を観て、図書館の可能性に感動。2021年1月より地元の豊田市中央図書館で広報として働き始める。市民社会のインフラである図書館の魅力を、ひとりでも多くの方に伝えていきたい。

 
リレーコラム「私のアートの見方」
第1回・アートボランティアのアートの見方 植村優子(TAP magazine 編集部)
第2回・アートを見る時は野生に帰る 森かん奈(TAP magazine 編集部)
第3回・「むずかしい」は「おもしろい」のはじまり 森井早紀(TAP magazine 編集部)
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